✴︎廣森サラ✴︎ 恐怖心は、行動を阻むーー連絡先を聞かなかった学生時代の思い出
今日は、学生時代の恋話をしようと思う。
振り返ると、勇気を出せばよかったと、
今でもふと思い出す出来事がある。
それは、気になる人の連絡先を聞く、
ということだった。
通学時、乗り換えの駅でよく見かける男性がいた。
着崩した制服がよく似合っていて、
当時流行っていた茶髪のツンツンした髪型も
様になっていた。
かっこいい人だな、と思いながらも、
同じ学校ではない。
ただ同じ駅ですれ違うだけの、
縁のない人。
私にとっては、
せいぜい“目の保養”のような存在だった。
そんな彼に、思いがけず近づく出来事があった。
親の意向で通うことになった塾が、
あのターミナル駅から徒歩数分の場所にあったのだ。
通い始めて一ヶ月ほど経った頃、
廊下ですれ違った瞬間に気づいた。
――あ、あの人。
そう思ったのも束の間、授業は始まり、
声をかけることもできないまま
時間は過ぎていった。
それからというもの、廊下やロビー、
自習室で何度もすれ違った。
きっと彼は、
私の存在など気づいていなかったと思う。
ドキドキすることはあっても、恋とは違う。
憧れの人。
私はただ、横目でそっと眺めるだけだった。
やがて、彼の情報が少しずつ耳に入ってくる。
一学年上であること。
模試の成績が良いこと。
派手な見た目に反して、
志望校は偏差値の高い学校だということ。
話しかけられるタイミングは何度かあった。
でも私は緊張して、
結局一言も発せずにやり過ごした。
あの頃の私を止めていたのは、
間違いなく恐怖心だった。
拒絶されたらどうしよう。
変に思われたらどうしよう。
そもそも今の自分の見た目は
おかしくはないだろうか。
それらの恐れは確実に私の行動を阻んでいた。
大人になった今なら分かる。
連絡先を聞くことは、勇気の証明ではない。
誰かとつながる可能性に、
そっと手を伸ばす行為だった。
行動を通して
自分自身を好きになれるーーー
その第一歩だった。
そして、この連絡先を
聞けなかったという経験が
私に残したものは、
勇気を出せなかったという自己嫌悪と、
状況を変えようと試行錯誤すら
しなかったという”実績”だった。
恐怖心は、行動を止める。
何かが壊れるのを防ぐ代わりに、
何も始まらない未来を選ばせる。
もしあの時、連絡先を聞いていたら。
結果がどうであれ、
私は「何もしなかった自分」ではなく、
「選んだ自分」を生きていたのかもしれない。
あの駅も、あの廊下も、もう同じ形では存在しない。
そもそも私も、あの時の純真な子供ではなく、
それなりの経験をした大人。
それでも、恋のご相談に乗っていると
ふと、思い出すのです。
憧れの彼と、
恐怖心とドキドキで固まった私を。

忘れられない恋の出来事。
あなたのストーリーを読み解きます

